内視鏡
ピロリ菌除菌
ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)の除菌治療は、私たちの将来の健康、特に胃がんの予防において極めて重要な意義を持っています。 ピロリ菌の除菌がなぜそれほど大切なのか、その理由と意義を3つのポイントに分けて分かりやすく解説します。1. 胃がんの発症リスクを大幅に下げる
ピロリ菌除菌の最大の意義は、胃がんの予防にあります。 日本人の胃がんの約99%にピロリ菌の感染が関わっているとされています。ピロリ菌が胃の中に棲みつくと、菌が出す毒素によって胃の粘膜に慢性的な炎症(慢性胃炎)が起こります。この炎症が長年続くと、胃の粘膜が萎縮して薄くなる「萎縮性(いしゅくせい)胃炎」へと進行し、最終的に胃がんが発生しやすい状態を作ってしまいます。 研究データでは、ピロリ菌を除菌することで、胃がんの発症リスクを約3割から4割、若い世代であればそれ以上に減らすことができると報告されています。胃がんという重大な病気を未然に防ぐための「最大の予防策」が、この除菌治療なのです。
2. 胃・十二指腸潰瘍の再発を防ぐ
ピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の主な原因でもあります。 昔は、潰瘍の治療といえば胃酸を抑える薬を飲み続けるのが一般的で、薬をやめると何度も再発してしまう人が多くいました。しかし、痛みの根本原因であるピロリ菌を除菌することで、潰瘍の再発率を劇的に下げることが可能になりました。除菌に成功すれば、生涯にわたって潰瘍の痛みや、潰瘍が悪化して胃に穴が空く(穿孔)といった大ごとになるリスクから解放されます。
3. 次の世代への感染(家族内感染)を断ち切る
ピロリ菌は、主に免疫力が未発達な幼児期(5歳ごろまで)に、衛生環境の悪い水や、感染している親からの口移しなどの「家庭内感染」によってうつると考えられています。つまり、大人になって自分がピロリ菌を除菌することは、将来生まれてくる子どもや、大切な孫へピロリ菌を世代間で連鎖させてしまうリスクを断ち切るという意味もあるのです。
ピロリ菌除菌の実際
ピロリ菌の除菌は、1週間お薬を飲むだけの比較的簡単な治療です。自分の未来の健康を守り、大切な家族へ菌をうつさないためにも、一度検査を受け、陽性であれば早めに除菌することには非常に大きな価値があります。 ピロリ菌の除菌治療は、1回目で約90%、1回目で失敗した場合に行う2回目の治療を含めると約95〜99%の高い確率で成功します。 一般的な治療の流れと成功率は以下の通りです。
1回目(一次除菌): 約70〜90%の成功率。胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を7日間内服します。
2回目(二次除菌): 約90%の成功率。一次除菌で失敗した場合、薬の種類を一部変更して再度7日間内服します。この2回目までの治療が保険適用の対象となります。
※除菌が成功したかどうかは、薬を飲み終えてから約2ヶ月以降に息や便などの検査で必ず確認する必要があります。 注意点 万が一、2回とも失敗してしまった場合は保険適用外(自費診療)となりますが、薬を変えて3次除菌以降の治療を行うことも可能です
ピロリ菌除菌後の人こそ「内視鏡」が必要
⚠️ 知っておいてほしい大切なこと
「除菌したからもう安心、胃がんにならない」わけではありません。 除菌をしても、それまでにピロリ菌によって傷ついてしまった胃の粘膜(萎縮性胃炎)のダメージはすぐには消えないため、胃がんのリスクはゼロにはなりません。むしろ、除菌後の胃にできるがんは非常に平坦で、バリウム検査では見つけにくいという特徴があります。除菌後の方こそ、年に1回は定期的に胃カメラ(内視鏡)検査を受けることが、早期発見・早期治療のために不可欠です。